=活動目的=


 ・日本における国家や政治と教会の関わりを、聖書と神学の視点から

  研究します。

 ・現在の日本の状況を踏まえ、教会がこの時代に担うべき神学的課題

  として整理します。

 ・整理された神学的課題を広く一般に提供します。

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2019年4月27日土曜日

世の支配構造からの脱却ー人をつくられた主が責任もっておさめられる社会・新しい家族像  第12回例会



 4月26日に「教会と政治」フォーラム第12回例会を行いました。
今回の講師は、当会呼びかけ人でもある聖契神学校の吉川直美牧師が、「聖書の家族観と憲法24条」と題してお話しくださいました。テーマのせいか、いつにもましてジェンダーバランスのとれた集いとなりました。


 はじめに、「戦後、家族のきずなが薄くなった。憲法24条があるから近代家族が崩壊している」と問題視している保守系団体「日本会議」などの動きがあります。自民党改憲草案の描く社会を憲法24条からとらえなおしました。
 封建的家族観復古の背後で、新自由主義と自己責任論が横行し、美徳の名の下で差別や暴力が不可視化されていきます。
 その対局にある聖書の「家族観」とはどういうものなのかを明快に説きあかす素晴らしい講演でした。

 
 憲法24条の起草者・ベアテ・シロタ氏は、「すべての人間は法の下に平等である。人種、信条、性、門地、国籍による、政治的、経済的、教育的、社会的関係における差別はいかなるものも認めず、許容しない」とかきました。
 そして、「国際平和を謳う憲法9条と、家庭における平和生存権の確保は、切り離すことができない」、と語りました。
 日常生活の中にある性差別、性暴力、DV、民族差別、いじめ、貧困、抑圧といった暴力構造の芽を取り除くことが、国家の平和につながる。9条と24条はお互いに補完し合っています。


 ところで 聖書は女性や家族についてどう見ているのでしょうか。
 創造において、家族の出発点は両性の関係性でした。サタンのまどわしに応じて、神の前に出ることのできなくなった両者は、夫婦間の相互扶助の関係を損なわれ、妻は夫を慕うが、夫は妻を支配するという呪いを受け、ふうふかんけいの破綻は息子たち(カインとアベル)に連鎖し、旧約聖書は家族観の軋轢や問題を繰り返し描いています。しかし、旧約聖書はそれを上回ってあまりある神のあわれみと救いの計画·神のかたちの回復によって、神の家族を形成させて回復していきます。
 新約の時代になり、イエス・キリストは、新しい家族像をもたらしました。
 力によるこの世の支配構造に傷ついた人を、柔和な平和の主であるイエス・キリストが、神の権威をもって治めてくださる家・血縁だけではない神の家族・教会をとおして、いやし、立て直していくのです。

 また、神は旧約・新約を通して、共同体性、相互扶助を求めておられます。神の民が守るべきこととして、やもめやみなしごへの配慮をまず掲げ、貧富の差が広がらないように安息年・ヨベルの年をさだめました。初代教会は財産も共有する共同体でした。それは、神に仕えていくため、神のかたちを回復するためであって、国家が益するためではありません。 


 さいごに、キリスト者の家族観も、国家の影響を受けていると考えなおすことも大切。教会にとっても自らの構造的な問題への自覚を促される貴重な学びとなりました。

(文責:事務局)

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