=活動目的=


 ・日本における国家や政治と教会の関わりを、聖書と神学の視点から

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2018年11月14日水曜日

「人権と憲法の危機―今、キリスト者は何をすべきなのか―」 第10回例会の学びより


118日に開いた第10回例会の内容をご紹介します。

講師に森島 豊さんをお招きし、「人権と憲法の危機―今、キリスト者は何をすべきなのか―」と題してお話しいただきました。



以下に要旨をまとめます。(文責:事務局)


人権と憲法の危機―今、キリスト者は何をすべきなのか―

「私たちの国の憲法は、いま、戦後始まって以来の危機をむかえている。何が問題となっているのかを話したい」と切り出された森島先生は、まず日本国憲法97条のことから話しました。

日本国憲法第97
この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。」

条文のとおり、「人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果」を自民党の改憲草案では全文削除しようとしている。これは大変危険だが、第9条のように議論にもなっていないということは実は大問題です。
自民党改憲草案のQ&Aではこの条文削除について触れていませんでしたが、その後のQ&A増補版に触れられています。(以下にその抜粋)




 つまり、97条は11条と重複しているというのが1点、そして、「人権は神から人間にあたえられるという西欧の天賦人権説に基づいていることを改めるべきだというのがその理由。これを改め、「国」を主語とした人権規定に変えるということ。
 自民党憲法起草委事務局長である礒崎 陽輔参議院議員は、講演でこのことについて触れています。

 「天賦人権説はキリスト教の教えです。日本は神道の国なのでこの考えかたは違う」・・・・

今日の集会は大変重要です。憲法改正されるとこのような集会は開けなくなります。
 そして、話の要点を3つ上げました。

 ①キリスト教的人間観について
 ②抵抗権と人権理念について
 ③人権形成の課題と克服について

①キリスト教的人間観について 

アメリカ独立宣言(1776年)は、以下のように述べています。

われわれは、以下の事実を自明のことと信じる。すなわち、すべての人間は生まれながらにして平等で あり、その創造主によって、生命、自由、および幸福の追求を含む不可侵の権利を与えられているという こと。こうした権利を確保するために、人々の間に政府が樹立され、政府は統治される者の合意に基づい て正当な権力を得る。そして、いかなる形態の政府であれ、政府がこれらの目的に反するようになったと きには、人民には政府を改造または廃止し、新たな政府を樹立し、人民の安全と幸福をもたらす可能性が 最も高いと思われる原理をその基盤とし、人民の安全と幸福をもたらす可能性が最も高いと思われる形の 権力を組織する権利を有するということ、である。

 人権と抵抗権についてです。「人は創造主にあって権利を与えられている」としています。
 キリスト教なしには「人権」という言葉は生まれなかったと話しました。

そして、旧約聖書・創世記を見ました。創世記はイスラエルの民をなぐさめる物語です。

1 はじめに神は天と地とを創造された。2 地は形なく、むなしく、やみが淵のおもてにあり、神の霊が水のおもてをおおっていた。3 神は「光あれ」と言われた。すると光があった。 4 神はその光を見て、良しとされた。神はその光とやみとを分けられた。 5 神は光を昼と名づけ、やみを夜と名づけられた。夕となり、また朝となった。第一日である。6 神はまた言われた、「水の間におおぞらがあって、水と水とを分けよ」。 7 そのようになった。神はおおぞらを造って、おおぞらの下の水とおおぞらの上の水とを分けられた。8 神はそのおおぞらを天と名づけられた。夕となり、また朝となった。第二日である。 9 神はまた言われた、「天の下の水は一つ所に集まり、かわいた地が現れよ」。そのようになった。10 神はそのかわいた地を陸と名づけ、水の集まった所を海と名づけられた。神は見て、良しとされた。 11 神はまた言われた、「地は青草と、種をもつ草と、種類にしたがって種のある実を結ぶ果樹とを地の上にはえさせよ」。そのようになった。 12 地は青草と、種類にしたがって種をもつ草と、種類にしたがって種のある実を結ぶ木とをはえさせた。神は見て、良しとされた。 13 夕となり、また朝となった。第三日である。 14 神はまた言われた、「天のおおぞらに光があって昼と夜とを分け、しるしのため、季節のため、日のため、年のためになり、 15 天のおおぞらにあって地を照らす光となれ」。そのようになった。 16 神は二つの大きな光を造り、大きい光に昼をつかさどらせ、小さい光に夜をつかさどらせ、また星を造られた。17 神はこれらを天のおおぞらに置いて地を照らさせ、 18 昼と夜とをつかさどらせ、光とやみとを分けさせられた。神は見て、良しとされた。19 夕となり、また朝となった。第四日である。 20 神はまた言われた、「水は生き物の群れで満ち、鳥は地の上、天のおおぞらを飛べ」。
21
神は海の大いなる獣と、水に群がるすべての動く生き物とを、種類にしたがって創造し、また翼のあるすべての鳥を、種類にしたがって創造された。神は見て、良しとされた。 22 神はこれらを祝福して言われた、「生めよ、ふえよ、海の水に満ちよ、また鳥は地にふえよ」。23 夕となり、また朝となった。第五日である。 24 神はまた言われた、「地は生き物を種類にしたがっていだせ。家畜と、這うものと、地の獣とを種類にしたがっていだせ」。そのようになった。 25 神は地の獣を種類にしたがい、家畜を種類にしたがい、また地に這うすべての物を種類にしたがって造られた。神は見て、良しとされた。 26 神はまた言われた、「われわれのかたちに、われわれにかたどって人を造り、これに海の魚と、空の鳥と、家畜と、地のすべての獣と、地のすべての這うものとを治めさせよう」。 27 神は自分のかたちに人を創造された。すなわち、神のかたちに創造し、男と女とに創造された。28 神は彼らを祝福して言われた、「生めよ、ふえよ、地に満ちよ、地を従わせよ。また海の魚と、空の鳥と、地に動くすべての生き物とを治めよ」。 29 神はまた言われた、「わたしは全地のおもてにある種をもつすべての草と、種のある実を結ぶすべての木とをあなたがたに与える。これはあなたがたの食物となるであろう。30 また地のすべての獣、空のすべての鳥、地を這うすべてのもの、すなわち命あるものには、食物としてすべての青草を与える」。そのようになった。31 神が造ったすべての物を見られたところ、それは、はなはだ良かった。夕となり、また朝となった。第六日である。
 (説き明かしは省略)
 

②抵抗権と人権理念について


 創世記のとおり、人間は、他社と共に生きる存在として創造されました。そして「違う価値観を持つ人と一緒に生きることがあなたには必要だ」と語ります。
 不必要な存在はいない。あなたが存在しているのは神が喜ばれたから。
あなたにいてほしい―これが聖書のメッセージです。このメッセージに反することが行われた時、キリスト者は抵抗しなければならないのです。
 人類の権利は1500年かけて確立されました。プロテスタント教会の誕生です。
 カルバンについての紹介。
 ピューリタンの運動についての紹介。
 教会改革の運動は、信教の自由を求める運動へつながり、人権理念の法制化へと発展していきました。イギリスの例などでわかりやすい説明でした。




さて、日本ではなぜキリスト教が広がらないのか。それは、為政者がキリスト教の人権思想を見抜き、日本への影響を危惧して弾圧したからです。
日本国憲法の制定に大きくかかわった人物に、植木枝盛、吉野作造、鈴木安蔵がいます。彼らはキリスト教の影響を大きく受けていました。自由民権運動の歴史ある高知で、植木がまとめた日本国憲法草案には、抵抗権のことが書かれています。これを発見した鈴木安蔵の手によって資料は保存されました。抵抗権に関心を持ち、その根拠をさぐったのです。アメリカ独立宣言の人権思想は、キリスト教会に接近していたことが大きいのです。

③人権形成の課題と克服について

「日本における人権形成の弱点は、この『抵抗権』の思想的根拠がないこと」です。
聖書の考え方の基盤がないからです。そして、「だからこそいま、キリスト者は福音伝道していくことがとても大事だ。日本の人権形成の課題は教会形成から社会形成にむかうなかで、無宗教という名の「神道」という敵と向かいあっていくことだ」と結ばれました。

(文責:事務局)


講演の詳しい内容を深めたい方は、森島先生の著書をぜひお読みください。

人権思想とキリスト教 -日本の教会の使命と課題-

著 者: 森島 豊
出版社: 教文館
https://www.kyobunkwan.co.jp/publishing/archives/17759

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